勇翔とボルトは二人で湖から少し離れた山奥にやって来た。

「…あの…ここは…」

「この山一帯には『結光天域』が張られてる。訓練するには丁度いい。」

「結光天域…?」

「光を一点に集中して侵入者を弾き返す対侵入者用攻撃結界だ。生半可な攻撃じゃ破れない。いいから訓練を始めるぞ!」

ボルトはそう言いながら右手に巨大な斧を握っていた。

「…えっと…何を?」

「…んだよ、要領悪ィな…こういうことだ!」

ボルトは次の瞬間姿を消した。勇翔は何が来るかも見ずに横に飛んだ。するとさっきまで勇翔がいた場所に空からボルトが斧を叩き付けた。地面が一撃で陥没していた。

「…ッ!?」

勇翔はあまりの威力に悪寒を感じた。当たっていたらただでは済まない。

「ふん。速さはまぁまぁだな。今のを避けれねぇんじゃあ訓練する意味がねぇからな。お前もプレイヤーなんだろ?ならさっさと降霊しな。」

勇翔はボルトの語気に手抜きは命取りだと思い、右手を上に突き出した。

「来れ、バロン!正義を守り善を貫く聖なる獅子よ!」

スルト空から数本の稲妻が束になって勇翔に落ちた。辺りには爆煙が立ち込めた。

「…行くぞっ!!」

ボルトは煙が晴れるのも待たずに切り掛かった。斧が当たった衝撃で辺りの煙が吹き飛んだ。そこには斧を片手で受け止める勇翔がいた。勇翔の足元は更に陥没していた。

「…やるじゃねぇか…」
ボルトは距離を開けた。すると勇翔が不意に空を見上げた。

「…どうした。」

「あ、いえ…なんか、空が…」

「…空…?」

ボルトも空を見上げた。次の瞬間二人の遥か上空に光の亀裂が走った。

「な…!?」

「ちっ…誰か入って来ようとしてやがるな…だがそう簡単に破れるわけが…」

しかしボルトがいい終える前に光の亀裂を突き破って何かが降りてきた。

「退け、勇翔!!」

ボルトは勇翔を押し退けて斧を構えた。空から降って来た何かはボルトの斧が受け止めた。しかしそれは剣を構えた人間だった。