「…さて、勇翔君、といったかな?」

「は、はい!」

急に名前を呼ばれた勇翔は思わず正座してしまった。

「何もそこまであらたまる必要はない。」

「す、すいません…」

「君は、訓練を受けに来たのか?」

「は、はい!」

「属性は?」

「えっと…紫電属性です。」

「…そうか、なら『ボルト』に訓練をみさせよう。ボルト!」

パラケルススが声を発すると、パラケルススの横に雷が集まって光を放った。光が晴れるとそこには紫色の髪と瞳を持つ男性が現われた。

「…何だ、パラケルスス。」

男性は荒っぽい口調で話し掛けた。

「彼の訓練を見てやってくれ。」

「…分かった。おい、ガキ。」

「は、はい!」

「さっさと来い。」

二人は小屋を出て行った。中にはパラケルススと憲蔵だけになった。

「…彼は、あいつの息子なのだったな…?」
「…そうです。」

「…父と息子、どちらかしか生かさぬか…何とも非情な…」

「…二人とも、生きられる道は無いものでしょうか…」

「…無駄だな。彼は恐ろしいほどに力を持っている。それこそ、あいつと並ぶか、それ以上の力をな…」

「…やはり、無理なのでしょうか…」

「…息子は父を超えて成長するものだ。それに、『大神殺し』から生まれたのだ…それこそ、父を超える力を持っていて当然というもの…」

「…しかし…ッ!」

「くどいぞ、憲蔵…」

パラケルススはとてつもない威圧感で憲蔵を睨んだ。憲蔵は思わず言葉を呑んだ。

「…お前の父は、もっと非情だった…当主を名乗るなら、もっと毅然としろ。」

「…申し訳ありません…」

「…かつての仲間のお前の心情も分からんでもないが、今は敵だ。殺らねば殺られる…そういう相手だ…」

「…」

憲蔵は何も言えなかった。そのことを憲蔵は誰よりも理解していたからだ。

「…昨日の友が、今日の友とは限らない…それは、いつの時代も変わらない…敵は、いつの時代も他人だ…」

そういうパラケルススの横顔は、哀しみに染まっていた。