「どこにいくんですか?」

「あぁ。取りあえず登録は終わってるから、訓練に行くか。」

「訓練、ですか?」

「あぁ。」

その時二人の後ろの方から二人を呼び止める声がして二人は振り返った。

「待ってくれ、二人とも!」

それは左目に眼帯を付けた女性だった。

「ユリスか。どうかしたのか?」

「あぁ。『賢人』の所に行くのだろう?ならこれを持って行ってくれないか?」

ユリスはそう言いながら小包を憲蔵に渡した。

「これは?」

「『賢人』に頼まれたものだ。中身はなるべく見ないでくれ。」

「…あぁ。分かった。」
憲蔵は小包を受け取ってまた歩き出した。ユリスは二人の背中を少し見つめて来た道を戻って行った。

「『賢人』って、誰なんですか?」

「あぁ。今から会いに行く人だ。」

「どんな人なんですか?」

「…まぁ、変わり者だ。だが腕は確かだ。心配するな。」

二人はそれきり口を開くことも無く本部を出て車で移動し、着いたのは湖だった。

「ここは…」

「ここは、ニューヨーク州のはずれ、オンタリオ湖さ。」

憲蔵はそれだけ言ってさっさと行ってしまった。勇翔は間隔を詰めるために走った。少し歩くと一軒の小屋があった。中に入ると誰もいなかった。

「…はぁ、やはりな。」
「え?」

「『賢人』は良く湖で釣りをしてるんだ。多分この裏だろう。」

二人は小屋の裏手に回った。すると水辺で釣りをしている老人がいた。憲蔵は静かに近付いた。

「釣れますか?」

老人は振り返らずに返事だけした。

「…雷帝が、護衛も付けずに何をしに来た?それも、子供まで連れて…」

「実はその事で話があって参りました。」

「…また儂に、人殺しをさせるのか…」

憲蔵は見兼ねてそっと耳打ちした。

「…あいつは、斗耶の息子です…」

「…!?」

「…貴方なら、この意味がお分かりでしょう…」

「…運命とは、惨いものじゃな…」

「えぇ…全く…」