その時、部屋全体に響き渡る音量で通信が入った。

「緊急事態発生!緊急事態発生!大西洋上空に敵影確認!およそ三千!部隊運用から見て敵は反国連勢力の『アークセラフィム』と断定!繰り返す…」

その後はさっきと同じ放送が繰り返されている。

「…さて、どうしたものかな…」

大元帥が黙っていると一人の男性が椅子から立ち上がった。

「俺が出る。他の奴等は手出すなよ。」

男性は髪と瞳が燃えるように赤く、左手には鞘がされた剣を握っている。その剣は刃の部分だけで1メートルはあるだろうか。

「そうか。なら君だけで十分だな。頼むよ、グレン。」

「あぁ。全員皆殺しにしてやるよ…」

グレンと呼ばれた男性はそれだけ言って部屋から出て行った。

「あの人は…」

勇翔は憲蔵に密かに耳打ちして聞いた。

「あいつはグレン・アイルベルン。元帥最強の攻撃力を誇り、事実戦場で最も戦果をあげている男だ。あいつは第六師団師団長でもある。覚えて置くんだな。」





「…おぉ、おぉ…大層な数じゃないか…楽しめそうだ…!」

グレンは報告のあった大西洋上空に待機していた。すると遠くから敵が接近して来た。

「ふ、少しは抵抗してくれよ…?」

グレンは剣を鞘から払った。

「来い!スルト!!」

グレンが叫ぶと剣から炎の渦が発生してグレンを飲み込んだ。すると一瞬でグレンは炎を吹き飛ばした。グレンは体に火の粉を纏い、剣は刃の部分が炎に包まれていた。

「はっはっは!!」

グレンは敵に向かって突っ込んだ。

「う、うわあぁぁ!?」
グレンに突っ込まれた敵は恐怖に悲鳴をあげた。

「はっはっは!!どうした、どうしたァ!そんなもんかァ!!」

グレンが剣を振るとその軌跡をなぞって炎が敵を焼いていく。三千いた敵は十分とせずに全滅した。グレンは誰も居なくなった空に一人で浮かんでいた。白かった服は所々血を含んで赤黒く染まっていた。