真藤はすぐに部屋を出て行った。

「…海上保安庁が、私達の頼みを受け入れますか?」

「…お前で無理なら、俺が話そう。それでも動かないなら、師紀家の力を使うまでだ。」
「…分かりました。」

「頼むぞ。俺は空に上がる。何かあったら言え。」

「えぇ。」

憲蔵は部屋を出た。長い廊下を歩きながら、一人空を見上げた。

「…お前は、一体何を望むんだ…斗耶…」




「…!?今、何か…」

勇翔は不意に何かを感じた。

「…どうやら、強大な力を持つ者が近付いている様ですね…これでは、貴方の友人達もただでは済まないでしょう…」

「…皆が…!?」

勇翔はそれを聞いて走り出そうとした。しかし目の前に雷が落ちて道を阻んだ。

「どうして止めるんですか!?」

「…今の貴方に出来る事など、何も無いでしょう。」

「な…!?」

「貴方には、力が無い…しかし回りの人間には大きな力がある…北欧の主神、日本の守護神、オリンポス十二神を束ねる神、大悪魔を使役する王、世界の調和を守る太陽神…しかし貴方には大きな力は無い。それは貴方が力を欲しないから…」

「…貴方は、力をくれるんですか…?」

「…私の力は、守る力…貴方が守る力を望むならば、力となりましょう。」

「…貴方の名前は…」

「我が名はバロン。光と善たる者達の守り手…貴方の望む盾となりましょう。」

「…ありがとう…バロン…」




「…来たか…!?」

憲蔵はゼウスを降霊させて空に浮かんでいた。すると空の彼方から影が学園に向けて飛んで来るのが見えた。

「崇史!至急、海自に連絡!二時の方向距離二千!仰角六十度に地対空ミサイルを発射するよう伝えろ!」
「了解しました!」

それから少し間を置いて海岸線から無数のミサイルが影に向けて放たれた。

「…当たるか…?」

ミサイルは確かな軌道で影に向かった。そして爆発が広がった。

「…やりましたね…!」
通信機からは崇史の声が聞こえている。しかし憲蔵は逆に雷の槍を構えた。

「…いやまだだ!」

するとまだ収まらない爆発の中から影が出て来た。影は海岸線に展開した海自に向かった。

「!?しまった…!?」