「えぇ、お願いしますよ。じゃあ、俺は仕事に戻るが、お前はここで待ってろ。蓮もここにいてくれ。あと、これを持ってろ。」

憲蔵は蓮にピアスを手渡した。

「…これは…」

「小型の通信機だ。お前は、ピアス型にしておいた。まぁ、念の為だ。」

「分かりました。」

「じゃぁ、頼みましたよ。おやっさん。」

「おう。」

憲蔵は部屋から出て行った。

「さて、お前さん方も適当に座んな。仕事の邪魔しなけりゃ適当にその辺でも見てな。」
「あ、はい。」

男は二人にそう言って緑昂石を机の上に置いた。

「しかしまぁ、あの憲蔵に息子が出来るたぁな…世の中何が起きるか分からんな。」

「父の事、知ってるんですか?」

「あぁ、そりゃあな。あいつとは、もう三十年近くになるな。」

「そんなに…」

蓮がそう呟くと男は厳つい顔を蓮に向けた。
「そういや、お前さんは誰だい?」

「あ、私は逢原蓮と申します。」

「逢原ってこたぁ、師紀の分家か。なるほど、日本の極道界をしきる二大名家が一緒たぁな。」

「…良くご存じですね。」

「お前さんとこの逢原弦慈朗とも知り合いでな。」

「祖父と、ですか?」

「あぁ。あいつとは酒飲み仲間でな。よく一緒に酒を飲み歩いたもんだ。まぁ、十年以上前だがな。」

「…貴方は、何者なんですか?」

「…俺ぁ、単なるしがない鍛冶職人さね。」
その声には、何か悲しみを含んだものがあった。






「…今度は、何が来たんだ?」

憲蔵は学園長室に来ていた。中には学園長と真藤がいた。

「先程、本部の索的班が、こちらに接近する敵影を発見したとの報告がありました。数は、一だそうです。」

「…単独行動か…」

「もしくは、単独作戦行動が可能な程の能力があるのか…」

「…いずれにせよ、警戒はした方が良さそうだな。もしやとは思うが、あの時の仮面の男だとしたら…」

「…厄介ですね…」

「…崇史、海上保安庁に全包囲に非常線を張れ。真藤、学園全体に非常事態宣言だ。全ての生徒と非戦闘員を体育館に収容しろ。」

「了解しました。」