「…ここは…」

勇翔は気付くと光が一切届かない暗闇に立っていた。

「…そうだ。ここは僕の心の奥底…」

その時勇翔の周りに雷が落ちた。

「な…!?」

雷の轟音の中、更に大きな雄叫びのような声が鳴り響いた。

「何者だ!?」

その声に振り返ると、少し離れた場所に全身が白い体毛に覆われ、たてがみは銀色のライオンがいた。

「…あなたが、僕の聖霊…?」

「…お前、この心の主か?」

「あ、坂原勇翔、です…」

「…そうか…貴方が…」
「…貴方の名前を、教えて戴けますか?」






その頃京介は蓮と憲蔵と一緒に廊下を歩いていた。

「どこに向かってるんですか、父様?」

「お前、緑昂石は持ち歩いてるだろうな?」
「あ、はい…ありますが…」

「今向かってるのは、この学園にいる最高の鍛冶師のところさ。」
「この学園には鍛冶師までいるんですか?」
「あぁ。そこで緑昂石を加工するんだ。着いたぞ。」

憲蔵が足を止めたそこには『鍛冶工房』と書かれていた。憲蔵は扉を開けてすぐの階段を降りていった。京介と蓮も後についていった。

「やぁ、おやっさん。お邪魔しますよ。」

憲蔵の声に振り返った男は厳つい顔に作業着の上をはだけたまさに『職人』と呼べる風貌だった。

「ん…?おぉ、憲蔵か。久し振りだな。毎度毎度、いきなり来やがって、今日は何の用だ?」

「はは、まぁそう言わずに。今日は、息子の用事でしてね。おい、京介!」

京介は呼ばれて前に出た。

「ほぅ…それがお前のせがれかい。」

「えぇ。」

「お前の若い頃にそっくりじゃねぇか。」

「そうですかね?」

「まぁ、自分じゃあ分からんもんだからなぁ。で、何をやりゃいいんだ?」

「あぁ、そうでした。おい、京介。」

「あ、はい。」

京介は男に緑昂石を渡した。

「…ほぉ…こりゃ、上もんだな…中身は…グングニルか?」

「流石おやっさん。一目で見抜くとは。」

「ふん。伊達に鍛冶師やっちゃいねぇさ。で、グングニルってこたぁ、槍に加工すりゃいいのか?」