「…つれないなぁ…君も、この闘いを楽しんでるんだろう?」
「…そうだな……お前がもっと本気を出せば、もっと楽しめるんだろうがな…」
仙石は一瞬眉が動いたが、努めて冷静に振る舞った。
「おやおや、これ以上強くなれって言うのかい?」
「…十拳剣、持ってるんだろう…?」
憲蔵が突然発したその言葉は、仙石の表情をあっさり緊張の色に染め上げた。
「……何のことかな?」
「とぼけるなよ、仙石……神をも討ち殺す神殺しの剣、十拳剣…お前が持ってるのは分かってるんだ…」
「……仕方ない、か……」
仙石は二本の刀を交差させた。
「天に坐するは我奉る混沌の神…地に臥するは我崇めし豊穣の神…天地の狭間にありしは、時駆ける黄金の火と白銀の刃…我が袂に来たれ!!」
仙石が呪文のような物を唱えると、二本の刀が光に包まれ、一本の剣になった。剣は仙石の身の丈よりも大きく、強烈な霊力を放っている。
「……やっと出したか…魔王と呼ばれた力、見せてみろ!!」
二人は互いに武器を構えて走り出した。先に仕掛けたのは仙石だった。仙石は十拳剣のリーチを生かして左から右に薙払った。憲蔵は瞬時に屈んでかわしながら、左手の拳を仙石の鳩尾目掛けて放った。仙石はその拳を十拳剣を逆手に持ち替えて柄で下から上に弾いた。
「くっ………!?」
「貰った!」
仙石は隙ができた憲蔵に十拳剣で切り込んだ。だが憲蔵はとっさに左手の拳に霊力を圧縮し、それを地面に叩きつけた。その衝撃に仙石が怯んだ隙に、今度は憲蔵が拳を振り抜いた。だが仙石は直感のみで飛び退いてかわした。

