「京介さん!?」
勇翔は声を上げた。しかし京介は微動だにしない。
「…甘いな。」
「!?」
赤碕が放った刃は京介に届かず、後ろの椅子に突き刺さった。赤碕は椅子に突っ込んだ。「っ、テメェ…!?」
赤碕はそこまで言って言葉を呑んだ。赤碕の目は京介の後ろの女性にだけ向けられていた。
「き、菊翅(きくばね)さん…っ!?」
赤碕は怯えているのか震えている。すると女性が静かに威圧する様な声で言った。
「…赤碕…」
「は、はい…!」
赤碕は片膝を付いて敬服した。
「私は街中での軽率な行動は控える様に言ったはずだが?」
「…」
「私の言う事が聞けないのか…?」
その声は強烈な殺気を含んでいた。
「…っ!?」
赤碕は完全に気圧されてしまった。
「…ふ、それでいい。だが…」
一度振り返った菊翅は手に左手に持っていた刀を鞘から払った。
「…な…?」次の瞬間、赤碕の右肩が切られていた。肩から血が噴き出した。
「ぐ、あぁぁっ!?」
赤碕は左手で肩を押さえた。
「ぐ、あ…!?」
「ふん…連れて行け。」菊翅は後ろにいた部下らしき数人に言った。「はっ。」
数人は直ぐに赤碕を担いで店から運んだ。菊翅は京介に顔を合わせた。
「…お前がここにくるとはな。御館様は元気か?」
それを聞いて京介の顔色が暗くなった。
「…良くは無い様だな…御館様も御歳確か八十七だったか。」
「…御館様は、床に伏せっておられます。今はまだ庭を歩くだけの元気はお有りのようですか、いつお倒れになるか分かりません。」
「そうか…お前も学園に行くのか?」
「はい。」
「そうか…あの学園長は中々に面白そうな男だ。気を付けることだな。」
「それは、学園長にですか?」
「まぁ、そんなとこだ。じゃあな。」
菊翅は店から出て行った。