「あくまで推測だ。しかし、万が一ということもある。用心するに越したことはない。」
「了解しました。お二方のことはお任せください。」

「あぁ。頼むぞ。俺は教室に戻る。」

「分かりました。」

憲蔵は三人を残して教室に戻った。教室にはすでに生徒が戻っていた。

「お、もう戻っていたか。流石は真藤だな。手回しが早い。」

「先生、何があったんですか?」
尋ねたのは勇翔だった。

「…いろいろあってな。」

「いろいろって…」

「ここから先は、軍属じゃないお前達には話せない。済まんな。」
「…いえ…分かりました。」

「…じゃあ、かなり遅れたが授業を再開するぞ。前回は神器について話したんだったな。なら今度は、かなり重要なことを教えよう。ズバリ、自分の聖霊との対話だ。」

「…聖霊との対話…だけど、それはかなり高位の聖霊じゃないと出来ないんじゃあ…」

「良く勉強してるな、勇翔。そう、聖霊との対話は本来Aランク以上の聖霊じゃないと出来ない。」

「じゃあ、なんでこんな授業を…」

「この学園の建材は特殊な素材で出来ていてな。この中にいると聖霊の自我が目覚めやすい。だからこその授業だ。普通に覚醒するのを待っていては時間か無い。」

「そうですか…分かりました。」

「良し、ならお前ら机に伏せろ。誰にも顔を見せるなよ。」

生徒達は言われた通り机に伏せた。

「集中して、自分の心をイメージするんだ。」

勇翔はそれを聞きながら自分の心の中をイメージした。次第に自分が暗い別の場所に沈んで行くのが分かった。
「…流石に飲み込みが早いな…お前達はいいのか?」

憲蔵は伏せない蓮と京介に言った。

「私達は…すでに『現出』は会得してますから。」

「これは、現出の訓練なんでしょう?」

「あぁ。現出が出来るようになれば、実戦向きな訓練も積めるからな。」

そんな三人の会話など露知らず、勇翔は自分の心の奥底に入って行った。