そればかりか、始まりの樹は枝を伸ばし初めている。まるで何かを探し求めるかの様に、枝が同じ方向に向かって伸びていく。
その姿を見て、大元帥は歓喜に震えた。
「………ッ、素晴らしいぞ、シヴァ………素晴らしいぞ、坂原勇翔ッ!!」
大元帥が喜びのあまり発した霊気が始まりの樹を刺激したのか、更に枝を伸ばしていく。
「……約束の日は近い…役割を果たして貰うぞ…勇翔君……」
大元帥はざわめく始まりの樹をあとに、地上に戻って行った。
………だが、大元帥の目には、妖しい光が煌々と煌めいていた……
「はぁッ!!」
斗耶は勇翔を弾き飛ばした。勇翔は空中で体勢を立て直して着地した。
「……鍛練は怠っていなかった様だな…喜ぶべきか、嘆くべきか………」
「ガアァァッ!!」
勇翔が再び斗耶に切りかかった。斗耶は打ち合いながらも、口元が微かに笑っている。
「……こんな状況で、笑っているのか…?」
「……勇翔君と戦えるのが、楽しいみたいね…変わらないわね、彼も………」
三人が見守っていると、二人が再び距離を空けた。だが斗耶はさっきまでとは違う構えをしている。
「…名残惜しいが、終いにしよう…ッ!!」
斗耶はそう言いながら剣を抜き放った。剣の軌跡をなぞる様に、霊気の刃が勇翔を直撃した。その刃を受けた勇翔の体からは、黒い霊気は消え去り、頭の黒い茨の冠も、どこかへと消えていた。斗耶は剣を握ったまま勇翔に近付いた。
「……生きているな、勇翔?」
「……うん…父さん……」
斗耶は勇翔を立たせた。勇翔はもうボロボロだった。

