「………やはり、お懐かしいですか…?」



「……あぁ…優秀だったからな、アイツは………儂もつい甘くなっちまう………」


「……もう…軍にはお戻りにならないのですか……?」



しかし、おやっさんは須山の問いには答えず、今度は蒼天を金槌で軽く叩いている。構わず、須山は話し続ける。



「……貴方の復隊を望む者も、大勢おりますよ………元国連統合軍第五師団師団長……李縣犂様……」



そう言われて、おやっさんは思わず金槌を振るう手を止めたが、またすぐに金槌で叩き始めた。



「……儂はもう、元帥なんぞでは無い……ただのしがない鍛治師さね………」



「まだ…諦め切れてはいないのだろう?」



そう言いながら須山の後ろに立っているのは、いつからいたのか、緋凰だった。須山は慌てて脇にそれて道を開けた。緋凰は部屋の中に入って、適当な椅子に座った。おやっさんは見向きもしないが、気配は確認している様だ。



「……来てやがったか、久尚……いや、今や霊帝と呼ぶべきか?」



「………変わらないな、お前は……昔のままだ…」



「……そうかよ………それで?わざわざ何しに来やがった?」



「……軍には、戻らないのか?」



「……お前まで、その話か………俺が軍を抜けた理由……知らないとは言わせねぇぞ?」



「……あれは…私が悪かった………すまない……」



「……お前が謝ることじゃねぇだろうよ……あれは…不幸な事故だった………アイツを守れなかった、俺が悪いのさ………」



おやっさんは蒼天を鞘に戻して立ち上がった。



「……さぁ、もう帰んな。お前さん方だって暇な訳じゃねぇだろ?」