「……う………ん…」


勇翔は、ゆっくりと重たい瞼を開けた。体が鉛の様に重く、起き上がることはおろか、手を動かすことすら辛い程だ。


そんな勇翔を、勇翔が寝ているベッドの横から見ている女性がいた。女性は、勇翔が目を開けたのに気付いて、静かに微笑んだ。



「気がつかれましたか?」



「…あの……ここは…」


女性は、椅子から立ち上がって側の棚の花瓶を手に取りながら答えた。



「ここは、国連統合軍日本駐留部隊の、習志野駐屯基地の医務室ですよ。貴方は、もう三日も眠っていたんですよ?」



女性は、花瓶を持ってベッドを離れた。戻って来たその手には、真新しい花がさしてあった。女性は花瓶を棚に置いて、椅子に座った。



「……三日………」


「常勤の、須山大佐が貴方を運んでらっしゃったそうですよ?」



「……須山大佐…?」



「あら、ご存じ無いのですか?大佐は、ご存じの様でしたよ?」




「……どこかで会った人なのかなぁ……あ、その………貴方は…?」



「あぁ……私は、須山大佐の連絡を受けて、本部から貴方の治療に参りました、アイリス・リンドバーグと申します」


そう言われて、勇翔は一番気になっていた質問をした。



「…そのコートは、元帥のコートですよね?……貴方は、元帥なんですか?」



「……私は、第四師団師団長です」



「……やっぱり、元帥様なんですね……」




「気がついたか、勇翔?」



「……須山…先生……?」



急に聞こえた声にドアを見ると、そこには須山が立っていた。



「あら、お仕事は良いの、須山大佐?」