「………結局、逃げられてしまったのぉ………」


翌朝、拾蔵達は再び会議を行っていた。その席に公王はいなかったが、代わりに勇翔が列席している。

「昨夜放った調査隊から、地下の下水道構内で戦闘の跡が発見された。昨夜の通り魔が何者かと争ったのだろう。もしくは……デュラハン頭目の、ソル・アルファディオか…………いずれにせよ、追い詰めることには成功したが、結局逃げられてしまった……今回は我々の完敗だな」


「……まだ、日本にいるんでしょうか…」



「昨夜、近くの港に謎の潜水艦が碇泊していたらしい。もしかすると、それで逃げたかも知れんのぉ………」



「……潜水艦…そんなものまで……」



「奴等の組織力を侮っていた……不覚だった…」


「どの道儂らだけでは、潜水艦まで相手に出来んじゃろう。デュラハンの頭目とやらも、相当な手練れの様じゃし、他にも仲間がいたかも知れん……今回は、仕方なかろう」


「………そういえば、公王様はどちらに………」



「公王殿は、今朝早くに公国に戻られた。親衛騎士団を連れてな。何か問題でもあったのかも知れんが……何かあれば、国連から支援がなされるだろう。それまでは、あの方に任せておけば間違いは無い……問題は、むしろ我々の方だ……」


「うむ……富山元帥の娘が、クイーンオブハートだと分かった今、何かしらの策は打たねばなるまい………さりとて、今はまだ普通の学生であるその子を、どうやって保護すべきか……」