「…京介さん、どうしたんだろう…」

「どうしたの?ユウ君。」

勇翔に声をかけたのは晶だった。

「あ、ううん。何でも無いよ。僕達も行こうか。」

「うん。」

二人も体育館に行った。




憲蔵は生徒達を床に座らせてから体育館を出て行った。暫くして戻って来た憲蔵の手には刀と鉄骨が握られていた。

「今日は神器についての話をしてやろう。だがこの中に神器の事を知ってる奴はあまりいないだろうから、まず神器の事を説明しておこう。」

憲蔵は鉄骨を床に立てた。

「この刀は、妖刀村正。名前ぐらいは聞いたことあるだろ。日本人なら誰もが知ってる刀だからな。」

憲蔵は村正を抜いた。その刃は妖しい光を帯びている。

「…ふっ!」

憲蔵は刀を横に振った。すると鉄骨が葉っぱでも斬る様に斬られた。生徒から驚きの声が上がった。

「村正は、刃の表面に薄い風の膜を纏っている。刀に霊力を注げば注ぐほど切れ味が上がる。」

憲蔵は刀を納めた。

「お前達も握ってみるといい。今後のためにな。だが振ったりするなよ。簡単に斬れるからな。」

憲蔵は村正を置いた。その途端、生徒達は村正に走り寄った。しかし京介は行かずに壁に寄り掛かって座った。その隣りに憲蔵が座った。

「…元気な様だな。京介。」

「…はい。父様。父様も、お元気そうで。まさかご自分からいらっしゃるとは思っていませんでしたよ。連絡して戴ければご用意なさいましたのに…」

「あぁ。途中で任務が入ってな。それで連絡する暇が無くなってしまってな。まぁ、どうせ自分で来るつもりだったさ。」

「そうですか…そういえば、あの緑昂石、ありがとうございました。」

「あれは、秘密の蔵から出した物だ。」

「…秘密の蔵というと…」

「…当主にのみ入る権利がある蔵だ。当主の了解無しには絶対入れない秘密の蔵…あの中には、あらゆる宝物が眠っている…お前が真にオーディンの能力に覚醒した時は、その権利をお前に譲ろうと考えている。」

「そんな…それは、隠居なさるおつもりですか…!?」

「…時代は、若い力を欲している…それに、もう老人の出る幕じゃない。家のことは、お前に任せたいんだかな…」