「……今は……捕まる訳には…行かない………」



ジャックは下水道を静かに歩き出した。







暫く下水道を歩いていたジャックは、不意に前方に気配に気配を感じ取って足を止めた。


「見いつけた……っと……」


暗闇から姿を現したのは、下水道には似合わない小綺麗な格好の銀髪の青年だった。



「……フィル・リトアス……」


「ジャック……いや、今は『デュラハン』幹部、カイ・レッドフィールドと呼んだ方が正しいのかな……?」


「……この国まで、貴様達の手が伸びていたか………」



「僕達の組織力を侮らないで欲しいなぁ……君を殺すまで、死んでも死にきれないんだからさぁ……ッ!!」


フィルは狂喜に震えながら、手にした拳銃をジャックに向けて乱射した。

だがジャックもナイフ一本で自分に当たりそうな弾丸を叩き落し、その他の弾丸は回避した。


「ハハッ……流石は切り裂き魔だ。このくらいは訳ないね……でも、これならどうかなッ!!」


フィルは今度は何処からか槍を取り出して、その槍でジャックに切り掛かった。流石のジャックも、今度はバタフライナイフを二本取り出して、ナイフを交差させてフィルの槍を受け止めた。



「………かかったね……!!」


フィルがそう呟いたかと思うと、ジャックの四肢を切り傷が走った。

「ッ!?」

ジャックはフィルをナイフで弾き飛ばした。
「………何だ…今のは……」


「……ゲイ・ボルグ………ケルト神話の英雄、クー・フーリンの所持する魔槍……一度貫けば、三十の傷となって相手を切り刻み、投げれば三十の矢となって襲いかかる……」


突然聞こえた声に振り返ると、ジャックの後ろから誰かがやって来た。