緋凰が咄嗟のことに反応が遅れ、通り魔の刃が拾蔵の胸を貫こうとしたその瞬間、通り魔の刃は天高く舞い上がり、拾蔵を貫かずに後ろの地面に突き刺さった。

通り魔は即座に拾蔵から離れた。すると、申し合わせたかの様にそこに火の球が降り注いだ。


火の球が巻き上げた煙が晴れると、拾蔵の前には井坂が、そして通り魔の後ろに桐島と高宮がいた。


「遅れてすまん、緋凰殿。目的は達したぞ」

「この辺り一帯は私と大天狗の結界で包囲した。もう、どこにも逃げられない」


「…そうか。ご苦労だったな……さて、通り魔……いや、今からはジャックと呼ばせて貰おう……もはや逃げ場は無いぞ?」


「大人しく、儂らについて来てくれんかのぉ?」


「我々について来れば、少なくともデュラハンからは保護出来る……どうか、聞き入れてくれないか?」


「………もはや…これまで、か………ならば………ッ!」


ジャックは急にナイフを六本程空高く投げ上げた。



「なんだ…?」


「何をするつもりじゃ……?」


拾蔵達が訝しげに警戒していると、空高く投げ上げたナイフが地面に突き刺さった。そして、その六本のナイフを紅い霊気の線が繋ぎ合わせて、ジャックを中心に六芒星の魔方陣が描かれた。


「!?魔方陣じゃと………!?」

「逃げるつもりか…!?」

拾蔵達がジャックを確保しようと駆け出したが、それと同時に魔方陣が爆発した。


「むぉ……ッ!?」


「く……ッ!?」


その強烈な爆風につむった目を開くと、そこにジャックの姿は無く、代わりに地面に魔方陣より少し大きめの穴が開けられていた。穴の下には下水道があった。


「……逃がしたか……」