「……六人………いや、もっと……」


人影は、気配がなるべくまばらな方角へと走った。

「………これは……」


人影が走っていると、不意に行き止まりにぶつかってしまった。


「……上…しかないな………」


そう人影が呟くと、次の瞬間にはその姿は屋根の上にあった。そして人影は再び走り出した。

暫く走ってから、再び地面に降りると、そこは大通りの様だった。


「………!?」


しかし、いつの間にか人影を取り囲むかの様に数人がどこからともなく姿を現していた。

「……お主が、連続通り魔の犯人じゃな?」


「………何者、だ……」

「元国連統合軍第一師団師団長、炎皇、師紀拾蔵……今は、師紀組組長をしておる」


「………何の用だ…」


「ご挨拶じゃのぉ……儂らは、別にお主を逮捕しに来た訳では無い。少し、話を聞きたいのじゃ」



「何………?」


「事と次第によっては、デュラハンから匿ってやっても、良いかのぉ………」


拾蔵の言葉に微かに人影が揺れた気がしたが、確かめる前に人影はナイフを構えた。


「……聞き入れては、貰えない様じゃな……仕方ない…ならば、無理矢理にでも……」


「来い、ジャック……全てを切り裂く無貌の魔人よ………」


「!?」


なんと、人影が聖霊を降霊させたのだ。

「……ジャック……ナイフ……」



「……まさか、彼の聖霊とは……」



「……ジャック・ザ・リッパー……の様じゃな……」


人影は全身に紅い霊気を纏い、フードから覗く瞳は、紅く揺れていた。


「……邪魔を、するな……」


人影が呟いたかと思うと、その姿が一瞬で消えて、拾蔵の目の前に現われた。

「な!?」


「拾蔵ッ!?」