「……あまり、根を詰めるな。得手不得手は誰にでもある。お前はあまり感知には向いていないのかも知れんな……さぁ、勇翔。もう休んだ方が良い」



「………うん……バロン、僕は気にしてないからね?」


勇翔は最後にそう言い残して姿を消した。


「………姿を見せろ、ランダ……」


青龍は振り返って怒りを込めた口調でランダを呼んだ。すると何も無かった場所に炎が燈った。その炎の中から、褐色の肌に黒いボサボサの長髪の女性が現われた。



「……流石だねぇ、青龍……気配は消してたはずなのに…あっさり見つかっちまったねぇ……」


「……ランダ……貴様……ッ!!」


バロンは今にもランダに飛び掛かりそうな勢いだ。だがそんなバロンを青龍が前に進み出て止めた。


「……お前は下がっていろ……ランダ、お前は何が目的で封印を破って出て来た?」


「目的?そんなもの、ある訳無いじゃないか」

ランダは鼻で笑う様にそう言い放った。

「アタシはね、暴れられりゃそれで良いのさ。ただそれだけ……目的なんて要らないね」


「……貴様……ッ!」

「ならば、お前は勇翔をどうするつもりだ?」

「ユウト……?あぁ、あの人間の子かい…別にどうもしないよ」


「何?」


「言っただろう?アタシは暴れられりゃそれで良いのさ。あの人間の子をどうこうしようが、今のアタシには何の意味も無いからね。それどころか、あの人間の子が死んだりしたら、封印されてるアタシまで一緒に消えちまうよ」


「……封印した者は、こうなることを予想していたのかも知れんな……分かった。もう消えろ」


「……おぉ、怖い怖い……」


ランダは不敵な笑みを残して再び炎に包まれて姿を消した。