「それを持って来たのは、特務隊長殿だったよ」
「レオンさんが、ですか?」
「あぁ。かなり疲れていた様子だったから、今は自室で休んでいるそうだ。後で挨拶に行くと良い」
「………そうします」
「……さて、それじゃあ私はもい行くが、君はもう少し休んでいなさい」
「はい…ありがとうございます」
勇翔に微笑んで、公王は医務室から出て行った。
「………ふぅ……」
勇翔は室内に人が居なくなったのを感じて、ゆっくりと体を休ませた。
「……彼の容態はいかがでしたか?」
医務室のドアを閉めた直後の公王に誰かが声をかけた。
「……アルバーヌか…」
公王はそう言いながら振り返った。そこにいたのはやはりアルバーヌだった。側には五、六人の男達が一緒にいた。皆、剣や刀で武装している。
「問題は無い様だ。意識もはっきりしていた。後遺症も見られない。暫くすれば完全に回復するだろう」
「そうですか……それは何よりです」
「それより、なぜそんな格好でうろついているんだ?親衛騎士団まで連れて……」
「まだ非常事態宣言が撤回された訳ではありませんので……念の為です」
「……あまり、周囲に動揺を広げない様にしなくてはね。さて、私は大元帥との話も終えたし、公国に戻ろうかと思うんだが……何か要望はあるかい?」
公王がそう言うと、親衛騎士団の槍を握った少年が手を挙げた。
「どうした、ドミニオン?」
「………日本……見たい……」
「日本?………観光ということかな?」
公王がそう言うとドミニオンと呼ばれた少年は嬉しそうにコクコクとうなずいた。

