「ぐ……ッ、しつこいな……!!」


仮面の男は勇翔に重い一撃を見舞った。それを食らった勇翔はかなりの距離を吹き飛ばされた。




二人が戦闘を始めてからもう三十分程が経っていた。辺り一帯の悪魔は殲滅されたが、その二人だけは、いつまで経っても闘い続けていた。



「……なんというスタミナだ……」


「あぁ……仮面の男は当然としても、勇翔のどこにあれ程の力があったのか……」



「あれが、坂原勇翔君か?」


憲蔵達は突然聞こえたその声に揃って振り返った。そこにいたのは、スーツを着た壮年の男性だった。脇にはアルバーヌが控えている。



「貴方は……!?」


その男性の正体に気付いた三人は慌てて頭を下げようとしたが、男性の手がそれを制した。男性は三人の前に進み出た。


「……あれが、坂原勇翔君か…なるほど。確かに強い霊気の持ち主だが……まだ危ういな…」


「勇翔をご存じなのですか?」


「勿論だ…だが、今の彼は危険だ………例えるなら、まるで刀身がガラスでできた剣のごとく、な……」


「ガラス…ですか……」


「切れ味鋭いその刀身は脆く儚く、ひび割れて尚刃を振るうその姿は、ひどく滑稽で憐れで………だがその心は、確かな安らぎを求め彷徨っている……このままでは、心身共に砕け散ってしまいかねない……」


「そんな、勇翔が……!?」

「………止めに入るしかあるまいな……アルバーヌはここでお三方と待っていろ」


「……承知致しました……」


男性はそう言い残してゆっくりと勇翔と仮面の男の元へと歩き出した。


「……おい、アルバーヌ。なぜあの方がここにいるんだ?」


「大元帥様とのご会談の最中だったのですよ」