しかし、振り下ろされた白刃は堂絃に届かず、代わりにそれを受けたのは………






「………お前は…」


それは、勇翔の蒼天だった。

「……何を、やってるんですか貴方は……ッ!!」


勇翔は蒼天に力を込めて仮面の男を押し返した。



「……直接剣を交えるのは二度目だな、少年……」



「なんで、味方に剣を向けてるんですか……!!助けに来たんじゃないんですか!!」



「……君は、敵の命を気にかけるのかね?戦士たるもの、その甘さは命取りだぞ?」


「そんなことを聞いてるんじゃない!!」



その時の勇翔は普段とはまるで別人だった。そのあまりの気迫に、堂絃は一言も発せなかった。



「………早く行って下さい……」



「な、なに……!?」


堂絃は勇翔の言葉に耳を疑った。


「………正気とは思えんな…敵を自ら逃がすとは……」


「……貴方は、許せない……ッ!」


勇翔は霊力を放出させた。



「………どうやら何を言っても無駄な様だな……だが、私も仕事をさせて貰おうか……」


「な……!?」



勇翔が息を吸った一瞬の僅かな隙を突いて姿を現した。


「………まさか……ッ!?」


勇翔は酷く不快な予感を頭から振り払い、堂絃を探して走り出した。




廊下を走り続け、勇翔は堂絃を見つけたが……


「堂絃……さん……」




胸から腰にかけて、血を滴らせた刃が貫通していた。その刃を握っているのは、仮面の男だった。




「………なぜ……我々は、大義の下に……ッ!」


仮面の男は堂絃の言葉を最後まで聞くことなく、剣を引き抜いた。剣を引き抜かれた堂絃は力無く床に倒れた。