「俺達を、紫閃大隊に…!?」

「どうして、私達なのですか?」

「元の紫閃大隊の隊員はほぼ全員元帥になるか退役してしまった。退役した何人かは戻って貰えるんだが、流石に元帥を引き抜く訳にもいかないからな。そこで、お前達に白羽の矢が立ったのさ。」

「じゃあ、隊長はその退役なされた方の中の誰かなんですね…」

「いや…隊長は、勇翔…」

「…え…?」

「…お前にやって貰いたい。」

「…えぇぇぇぇっ!?」
勇翔の予想だにしなかった声に隣りの二人が耳をふさいだ。

「ど、どうして僕が…」
「お前の戦闘力はずば抜けている。それこそ、元帥に引き抜かれてもおかしくはないだろう。だが、今は空席が無い。だからお前を上級特佐として任命し、紫閃大隊の隊長にしたいんだ。これは大元帥の勅命でもある。」

そこまで言って憲蔵は黙ってしまった。

「…その、上級特佐というのは…聞いたことが無いのですが…」

そう言ったのは京介だ。

「まぁ、軍内部での監査官とでも言ったところか…」

「監査官…ですか?」

「あぁ。特佐というのは、大元帥の勅命によってのみ任命され、その他の方法では決してなれない特殊な階級だ。」

「大元帥の勅命のみですか…」

「その理由は、その特殊な役割にある。」

「特殊な役割…?」

「その役割が、軍内部での監査官だ。監査官というのは、戦場、もしくは待機時の軍内部の様相を観察し、異常があれば報告する役割を担っている。そしてその役割上、かなり大きな権限を与えられている。だからこそ大元帥の勅命によってのみ任命されるんだ。」

「…その上級特佐に、僕が…?」

「あぁ。だがこれはあくまで書類上の便宜的なものだ。実際お前が監査官の仕事を任されることは無いだろう。だから安心しろ。」

「は、はぁ…」