「…来た様だな。」

弦慈郎は煙草を捨てて足で踏み消した。そこに蓮が現われた。手には真打を握っている。
「…会得出来た様だな。」

「はい。」

「ならば、今一度私が相手をしてやろう。会得した真打の力、見せてみろ。」

「…行きます!」

蓮は地面を蹴った。それと同時に弦慈郎も地面を蹴った。二人は同時に現われては互いの武器をぶつけ合ってまた消えた。そして今度は別の場所に現われてまた互いの武器をぶつけ合う。そんなやり取りを数回繰り返したところで二人は止まった。

「…流石ですね…」

「お前もな。よもや私の速さに追い付いてくるとは…中々厄介な力に目覚めたものだ…本気を出さなくてはいかんか…」

弦慈郎は羽織っていた着物を脱いだ。その着物は地面に落ちると鈍い音と共に地面にめり込んだ。

「それは…」

「あぁ、これは私が作った霊力を吸収する防具だ。」

「霊力を、吸収!?」

「そうだ。敵が放つ霊力を吸収して魔術の威力を減衰させる効果がある。しかし同時に私自身の霊力も大きく削がれてしまう。」

「な、それでは…!?」
「あぁ。これで2割増しといったところか。それで十分だろう。」

そう言った瞬間に弦慈郎の姿が消えた。

「!?」

完全に不意を突かれた蓮は弦慈郎の姿を見失った。その時下から何かに打ち上げられた。
「か、は…ッ!?」

その威力は凄まじかった。弦慈郎が方天画戟で蓮を打ち上げたのだ。空中で身動きが取れない蓮に弦慈郎は更に追い討ちをかけた。その一撃で地面に叩き付けられた蓮はもう動け無くなっていた。そこに弦慈郎が降りて来た。

「まぁ、こんなものだろうな。さて、戻るか。」

弦慈郎は落ちた着物を拾って蓮を抱え上げた。そして空間を元に戻した。すぐにその空間は師紀邸の中庭に戻っていた。その時には蓮も目を覚ましていた。二人は京介達のところに戻って一緒に食事をとって、その日は幕を閉じた。