｢えぇ。おかげで、傷も癒えましたよ。｣

｢…ふむ、ならば本気で行かせて貰おうかのぉ。｣

拾蔵は刀を構えた。

｢…行くぞ、スレイプニル!!｣

京介が手綱を振るとスレイプニルは前足を上げて嘶き声を上げた。
｢神をも貫く神王の槍よ、我が命に従い力となれ！｣

京介が唱えるとグングニルが強烈な光を放ち始めた。グングニルの表面に幾つものルーン文字が浮かび上がり、それらが一気に弾け飛んだ。するとグングニルは今までの質素な槍では無く、神が持つにふさわしい装飾と優美さを備えた槍になった。

｢…ついに見つけたな…グングニルの真の姿を…来い、京介!｣

｢はぁっ！｣

京介はグングニルを頭上高く振り上げた。すると空一面を覆うかの様にグングニルが展開された。

｢おぉぉっ!!｣

京介がグングニルを振り下ろすとそれに連動する様に空一面のグングニルが拾蔵目掛けて降り注いだ。

｢ほぉ、見事なものじゃのぉ…それでこそオーディンのプレイヤーじゃ。｣

拾蔵は刀を両手で握り締めた。それを後ろに回して構えた。刀の刀身に膨大な量の霊気が凝縮されていく。

｢はぁぁ…ッ、紅蓮煌波斬(ぐれんこうはざん)ッ！!｣

拾蔵は刀を振り抜いた。すると圧縮された霊気が一気に放出され、降り注ぐ槍を全て焼き払った。その様相はまさに紅蓮の波の様だった。全ての槍が焼き払われて、波が収まると目の前には京介が迫っていた。

｢はぁっ！｣

京介はグングニルを突き出した。拾蔵は刀で槍を受け流した。最後の一撃を刀で弾くと京介は距離を開けた。

｢…一撃一撃が鋭くなりおった…これは、思った以上に成長してしまった様じゃのぉ…これは、お主も危ういのぉ、憲蔵…｣

拾蔵が独り言を呟いていると京介が槍を横一閃に構えた。