「…これはな、ユグドラシルという樹だ。世界を支える偉大なる大樹の一本であり、ルーンの力の象徴だ。」

「ユグドラシル…じゃ、この樹からルーンの秘法を学ぶのか?」

「…いや、そこまでの時間は無いのだろう?」

「じゃあ、どうするんだ…?」

京介が聞いた時オーディンはユグドラシルから一本の槍の様なものを取り出した。そしてその槍を京介に突き刺した。

「!?」

「直接その体に叩き込むのだ。」

オーディンがそう言うと京介の体に槍を通して膨大な量の情報が叩き込まれた。

「ぐ、あ…ッ!?」

「…耐えるのだ。あと少しだ…」

その時京介に刺さっていた槍が光の粒子になって空気中に消えた。京介の体には傷一つ残っていない。どうやら左腕の骨折も直ったようだ。

「…これが…ルーンの秘法か…」

「あぁ。これでグングニルの真の力が引き出せる様になったはずだ。それと…」

オーディンはそう言いながら右手を横に伸ばした。そこにどこからか大柄な六本足の馬が現われた。

「こいつも連れて行くといい。」

「この馬は…」

「我が愛馬、スレイプニルだ。どんな場所でも風より速く走ることが出来る。乗りこなして見せろ。」

「…あぁ。ありがとう、オーディン。」

京介はスレイプニルの手綱を受け取った。スレイプニルは少しだけオーディンを見た。オーディンがうなずいたのを見てスレイプニルは京介の近くに寄った。京介はスレイプニルに跨がった。

「行ってくる。」

「あぁ。」

京介はスレイプニルを走らせた。スレイプニルは空へと駆け上がり、ユグドラシルに突っ込んだ。








「…来たようじゃな。」
拾蔵は鞘に納めていた刀を抜いた。すると京介の体にひび割れが走った。割れた京介の体から出て来たのは、大柄な馬に跨がった京介だった。

「ほぉ、スレイプニルまで連れて来るとはのぉ。どうやらルーンの秘法は学べた様じゃな。」