「…剣帝、坂原斗耶か…しかし、これでは我々の地位も危ういだろうな。」

緋凰は拾蔵からレオンとクロームに目線を移した。

「そうですね…我々の中にも、魔人化に成功した人間はいませんからね。」

「出来たのは、斗耶さんとあと一人…」

「…アイザックか…」

話はそこで途切れた。
「しかし、勇翔は大丈夫かのぉ…」

「あぁ。魔人化には、相当な負荷が体にかかるらしいからな。あの体でもてばいいのだが…」






「…あれ…僕は…」

勇翔は気付くと光が一切無い暗闇にいた。

「ここは…」

辺りを見回していると、背後から声を掛けられた。

「お目覚めですか…」

それはバロンだった。
「バロン…どうして僕はここに…」

「…貴方は…魔人化なされたのです。そしてそのショックで気を失われたのです。」

「魔人化…?」

その時勇翔は自分が何をしたかを思い出した。

「…僕は…あの人を…!?」

勇翔の脳裏に鮮明に記憶が蘇る。

「…貴方は、魔人化に成功なされた。魔人化は、発現させるだけでも困難な技術です。そして、魔人化に成功すれば、莫大な霊力を得ることが可能になるのです。」

勇翔は自分の気持ちを整理してから話し始めた。

「…魔人化って、一体何なの?」

「魔人化とは、人の領域を超越し、魔へと至る技術…魔人となれば、その身を悪魔に変えて、強大な力を振るうことが出来ます。」

「…そうなんだ…それで、僕はあの人を…」
勇翔はまた思い出してしまった。思わず肩が震える。

「…勇翔様、闇を受け入れて下さい。」

「…え…」

勇翔は思わず顔を上げた。

「人間は、誰しも必ず心のどこかに闇を秘めているものです。心ある存在ならば、それは当然…問題は、その闇を受け入れられるかどうか…」