「…くッ…!?」

勇翔は自分の力の無さを呪った。動こうとすると腹がねじ切れそうになる。

「くッ…止めろ…!」

勇翔は再び願った。

「…もっと、力があれば…!!」

勇翔は拳を握り締めた。

「…力が欲しいか…?」
勇翔は自分の中の聞き慣れない声に即座に答えた。

「力が、欲しい…全てを守れる力が…!!」

すると勇翔の体から凄まじい量の霊気が放出された。そしてそれに応える様にガラスを突破って蒼天が勇翔の右手に握られた。勇翔はそのまま刀を振り抜いた。刀から走った衝撃は男を簡単に吹き飛ばした。勇翔は床に降りた。槍は霊力の開放と同時に消えていた。

「…馬鹿な…!?」

男は目を見開いている。腰が抜けたのか立つ気配が無い。

「どうして…!?私でも封印が解けなかったのに…!?」

男はかなり動揺している。

「力が…」

勇翔は小さく呟いた。
「何…!?」

「…力が欲しかった…弥佳ちゃんが死んでから…ずっと、力が欲しかったんだ…全てを守れる力が…」

勇翔はそう言いながら少しずつ男との距離を縮める。

「そのためなら、悪魔に魂を売ってもいいと思った…大切な誰かを、守れるのなら!」

勇翔は刀を振った。刀から走った衝撃波は男のわずかに隣りにずれて壁に当たった。壁は大きく切り裂かれていた。

「…馬鹿な…!?」

男は額に汗を浮かべている。

「…君を研究材料にするのは止めだ。今すぐ殺してあげるよ…!」

男は槍を何本も空中に出現させた。

「はぁッ!!」

男は槍を勇翔目掛けて飛ばした。しかし勇翔はわずかな動きで槍をかわした。そして一瞬で男との距離を詰めた。

「ひ…ッ…!?」

男はうろたえた。次の瞬間には、勇翔に右の腰から左肩を一撃で切り裂かれた。