「儂や緋凰は、初代大元帥から仕えておる。ゆえに二代目の事は子供の頃から知っておる。じゃが、どうしても今の大元帥のことは分からんのじゃ。」

「それは、拾蔵様はもう退役なされたからでは無いのですか?」

レオンが意見した。

「無論、最初はそう思っておった。じゃがいくら調べても、大元帥となる前の記録が出て来んのじゃ。そこで儂は独自に大元帥の出自を調べたのじゃ。」

「大元帥様の…出自、ですか?」

「あぁ。しかし、それでも何も分からなかったのじゃ…」

「出自も、ですか…?」
「あぁ。考えてみれば、当然じゃがの…」

「当然、というのは…」
「…先代には…子供がおらんのだ…」

拾蔵がそう言うと、緋凰が苦い表情で顔を背けた。

「子供が…いない…そんな、馬鹿な…!?では、今の大元帥様は…!?」

「就任式の時に、大元帥は、自分は先代の息子だと言っていたが…先代の息子など、この世には存在しないのだ。」

「その様じゃな。それに、これは推測じゃが…今の国連に、大元帥の本名を知っておる者はおるのか?」

拾蔵のその一言は、緋凰以外の三人に衝撃を与えた。

「…言われてみれば…」
「知りませんね…レオンはどうだ?」

「いえ、それは私も…」
「…やはりか…今の大元帥は、不明な部分が多すぎる。聖霊すらも分からんのだからな。それに六年前の太平洋沖海戦では大元帥自ら指揮を執ったらしいが、その時も聖霊を出さなかったのではないか?」

「…確かに、私も大元帥様の聖霊は見たことがありません…」

「…まぁ、とにかくじゃ。もし大元帥が悪に傾く時は、儂等が止めることになりそうじゃな。」

「いざとなれば、私達が手を下さなければならないだろうな…」

「特務隊長であるお主には、酷じゃろうが…あくまでも万が一のためじゃ。」