「おい!弥佳(やよい)!どこ行ったんだ…」

八洲が中を見回してると何かが窓を割って飛び込んで来た。

「あれ~?ヤックンだ~!」

それは小柄な少女だった。見た感じは5・6才と行ったところか。
「弥佳…いつも窓は割るなと言っとるだろうが!!」

八洲は溜め息を漏らした。しかし弥佳と呼ばれた少女は楽しげに笑っている。

「キャハハ!ヤックンが怒った~!」

弥佳は部屋の中を走り回っている。

「はぁ…あいつを連れて行きましょう。」

「あの子は、何でこんなとこに…」

「弥佳は、私が任務の時に拾った子なんだ。だからあいつに本当の親はいない。」

「…捨て子、なんですか…」

「あぁ。今年で七つだ。本当なら小学校に行かせてやりたいんだか…保護者の問題で、それも叶わない。だから、ここで育ててるんだ。この辺りは、あいつにとっては庭みたいなものだろう。」

「…そうですね。」

すると弥佳が戻って来た。

「でも、なんでヤックンが来たの?」

「ん?あぁ、富士山の案内をしてくれないか?」

「ふぇ?」

「富士山にある宝珠が必要なんだ。道を知ってるんだろう?」

「うん。」

「なら、お願いだ。」

八洲がそう言うと、弥佳が満面の笑みを浮かべた。

「んふふ、良いよ!ヤックンのお願いなら、何でも聞いてあげるよ。」

弥佳は満面の笑みのまま部屋の中を走り回った。

「…随分好かれてるんですね。」

「あぁ。あいつを拾ったのは私だからな。親とでも思っているのかも知れんな。」

そう言う八洲の視線の先ではまだ弥佳が満面の笑みのまま部屋の中を走り回っている。