魔天戦史

「あんなに苦しそうだったのに…」

驚く勇翔にレオンは静かに近付いた。

「…取りあえず、中で話そう。」

倒れた蓮は黒服の男が部屋に運んで行った。勇翔達は拾蔵の部屋に集まった。最初に話し出したのはレオンだった。

「…勇翔。君はもう軍人として扱っても構わないのかな?」

「は、はい。」

「そうか。なら君にも同行して貰おう。」

「どこかに行くんですか?」

「あぁ。私は大元帥からの特命を受けて日本に来た。その特命とは、富士山直下にある極焔の宝珠の護衛…もしくは敵に奪取された場合の奪還だ。」

「極焔の宝珠…?」

「…知らないか…まぁ、当然か。宝珠のことは?」

「いえ…」

「…拾蔵様、構いませんか?」

「まぁ、彼なら大丈夫じゃろうて。京介は知っておるしの。」

「そうですか…宝珠というのは、精霊界の核とも言うべき極めて重要な物体だ。」

「精霊界の…」

「精霊界はそれぞれの属性の王達が領域を分けて支配している。その領域の境目を形成しているのが宝珠だ。宝珠が無くては領域の境目が消失し、精霊界そのものが消滅する。」
「そして、精霊界が消滅すれば隣り合わせのこの世界も消滅する。この世界が消滅すれば、次元の壁を挟んで対極にある異界も共倒れだ…つまり、世界の終わりってことだ。」

そう続けたのは京介だ。

「その宝珠が、何者かに強奪されていることが発覚した。大元帥様はそうならない様に宝珠を一ヶ所に纏めて保管するために全ての宝珠を国連が管理することを決定なされた。今世界各地で宝珠の確保のために国連が動いている。」

「…そうなんですか…それじゃあ、今から富士山に行くんですか…?」

「いや、まずは警視庁に協力を仰ぎに行かなくてはならない。」