「…拾蔵様、戻って来ませんね。」

三人は中庭に来ていた。勇翔は誰にでも無く呟いた。

「…まだ、客と話てるんだろうな。」

その時不意に勇翔は殺気を感じた。

「二人とも、伏せて下さい!」

勇翔は振り向きざまに雷の剣を右手の中に出現させた。その剣はどこからか飛んで来た黒い物体に当たった。

「ぐっ…これは…!?」
勇翔はその物体に弾き飛ばされそうになった。しかし物体はすぐに消えてしまった。

「…?何が…」

その時勇翔は背後に気配を感じた。しかし振り返る暇は無かった。その気配は白く輝く刃を勇翔に向けて振るった。

「…っ!?」

勇翔は思わず目を閉じた。

ギイィィィッン…!!

金属同士が擦れ合う音がして勇翔は目を開けた。

「…ったく、敵がいんのに…目、閉じんじゃねぇよ!」

男と勇翔の間にいたのは、京介だった。京介はそう言いながら男を吹き飛ばした。男は見事な身のこなしで着地した。すると視界の隅に魔方陣を敷いて魔法の詠唱をしている蓮の姿が映った。

「天上に集いし陽光よ。我が刃に集いて邪気を打ち払う聖光となれ!」

すると蓮が頭上高く振り上げた天叢雲剣に光が集まっていく。あっと言う間に光が溜まり、剣が巨大な光の刃を形成した。

「魔断光刃!!」

蓮は巨大な光の剣を男目掛けて振り下ろした。男は剣を腰溜めにして構えている。その姿はまるで侍のようだ。
「ハァァッ!!」

蓮が更に霊力を込めて振り下ろした。しかし男は固く目を閉じてさっきの姿勢のまま動こうとしない。

「…あいつ、何を…」

京介が不意にそう漏らしたその瞬間、男が動いた。

「はぁっ!!」

男は短い気合いと共に剣を抜き放った。男の剣はまっすぐに蓮の剣に当たり、次の瞬間三人が全く予想していなかったことが起きたのだ。

パキィィィ……ン…

残響音を残して光の剣が男の剣を受けた場所から粉々に砕け散ったのだ。