陽光差し込む一室に一人の青年が座っていた。
「よし。荷物はこれで大丈夫かな。忘れ物も無し。さぁ、出かけよう。」
青年は荷物を入れた小さなリュックを肩に背負って部屋を出て下の階に降りた。下には既に青年の母親らしき人がエプロンを付けて待っていた。
「準備は済んだの?」
母親らしき人は青年に柔らかな物腰で話し掛けた。
「うん、母さん。大丈夫だよ。」
「そう…気をつけてね?何かあったら直ぐに連絡するのよ?」
「うん。じゃあ、行ってきます。」
青年は家を出た。
「気をつけるのよ~!」青年は母親に向けて見えなくなるまで手を振っていた。
「…大丈夫よね、勇翔…だって貴方は、私達の息子なんですものね…さ、お洗濯しなくちゃ。」
母親は家の中に戻って行った。




「…そろそろ来るかな…」
勇翔は駅にいた。回りには朝らしくサラリーマンや学生の様な人の姿がある。そこに電車が到着した。勇翔は電車に乗り込んだ。適当な席を見つけて座った。
「ふぅ…」
「あの…」
「はい?」勇翔は呼ばれて顔をあげた。目の前には小柄な女の子が立っていた。
「お隣、良いですか?」見ると勇翔の隣りが空いていた。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
少女は笑顔で席に腰を降ろした。
「貴方も、『学園』に行くんですか?」
「え…?」
「何か、私の制服とそっくりだから。そうなのかなって…違いました?」
「いえ。あってますよ。」
「良かった。一人じゃ少し不安だったんですよ。お名前、聞いても良いですか?」
「僕は、坂原勇翔っていいます。君は?」
「私は、冨山晶。宜しくね。えっと…ユウ君って呼んでもいい?」 「うん。僕は、晶ちゃんでいいかな?」
「うん、いいよ。」
すると電車がゆっくりと減速した。車内にアナウンスが流れる。
「行こう、晶ちゃん。」「うん、ユウ君。」
二人は一緒に電車を降りた。駅から暫く歩くと大きな建物が見えて来た。
「あ、見えて来た。あれじゃないかな?」
「多分、そうだと思うよ。行こう。」
二人は建物に向かって歩き出した。