雨降り少女

彼は、空を見ていた。


最初からその瞳に、私など映してはいなかった。


私は、泣いた。

泣いて、むちゃくちゃに刃物を振り回した。




彼は、肉塊になった。

それでも、血が写り込む世界に私はいなかった。



カナシイコトハ…


ソウダ、最初カラ私ナド見テイナカッタ…



絶叫した私を雨が打った。




あんなにも、恐怖だった雨が私に打ち付けた。
増えていく水かさに、なぜだか私は恐怖を覚えなかった。













―――やがてすべてが、雨に漬かった世界で、私は見上げた。




あんなにも怖かった、水の色は…
皮肉にも、よく晴れた空の色をしていた。

水に、雨に、自身と液体との境目がなくなって…

自我と水流の境目がなくなって…

言葉はすべて、小さな泡となって…




水に溶けた私は、ようやく悟った…







此処に、還ってきたかったんだと…




彼が彼女の一部となった水のどこかで、小さく何かをつぶやいた。







「還る場所ができたら、今度は還っていく君がいないんだね…」



けれど、その言葉は、彼女の中で、泡となり…





やがて…消えた。



雨降り少女~霧雨編~…END