『メール?…じゃない、着信だ。』
慌てて、携帯を手にした。
(え?嘘でしょ?)
その番号は、アドレスに登録されていない。
だけど、見覚えのありすぎる11桁だった。
その番号が着信画面で点滅している。
『拓…なんで?』
一瞬ためらった。
1年前の自分に引き戻されそうな、そんな気がして・・
迷いながら、ダイヤルキーを押した。
‥大丈夫
今のあたしは、以前のあたしとは違う。
そう、心に言い効かせながら。
“もしもし?真奈?今から出れる?”
その声に胸の奥がギュッと締め付けられる。
咄嗟に言葉を返すことが出来ない。
『・・・、』
“窓から、みて?”
出窓に駆け寄り、カーテンを開けて外を覗いた。
マンションの3階の角部屋だから、各部屋に窓がある。
あたしの部屋のそこは、ちょうど側道が見える位置だ。
見覚えのない赤いRV車が、道路の脇に停められていた。
そして、見覚えのある男が出窓に向けてひらひらと手を振っている。
その男は、【森山拓也】
あたしの恋人・・・だった人物、
俗に言う【元彼】だ。
あたしはそう認識していた。
あの恋は一年前に終わったものだと思っていた。
なのに何故、拓也は訪ねて来たんだろう。
屈託のない笑顔をみると、自分の思い込みだったのかと勘違いしそうになる。

