――進む時計は止まらない。


ある曇天の日。


「上総、明日は父上が亡くなった日だ。」


時塚様は寂しげに言った。

年に一度、輝かしい笑顔が曇ってしまう日。
時塚様の父上様が亡くなられた日。



「今年で四年目か…」
「もうそんなに経つのですね。」
「あっという間だったな。」


今でこそ普通に話しているが、当時の時塚様の落ち込みようは見ていられなかった。



「あの時は全てがどうでも良かったな。でも」
「?」
「上総がいたから。」
「…私ですか?」
「うん。あの時“アナタの悲しみを救えない私を許してください”って、俺よりも辛そうな顔で言ったから。前向きに生きようって思ったんだ。」



確かに言った記憶がある。

悲しむ姿を見ていたくなくて、でも何も出来ない自分が悔しかった。



ちゃんと言葉は届いていたのか。



「上総がいてくれて良かった。」
「私は時塚様の傍にいられて良かったです。」
「これからも居てくれるよな?」
「もちろんです。アナタの命尽きる、その日まで。」



時計の針が止まるまで――。



進む時の中を共に。