「も…無理……」
稽古場のど真ん中、時塚様は大の字で寝転がった。
「今日はここまでにしましょうか。」
「助かった……」
流れる汗を手拭いで拭う。
「剣術、だいぶ上達しましたね。」
「本当か?」
「はい。」
「へへへ、上総に誉められると自信つくな。」
「ですが、まだまだです。ご自分の身ぐらい守れるようになっていただかないと。」
寝転がっていた時塚様は、上半身だけを起こした。
「俺には上総がいるし、剣術なんて必要ないけどな。守って、くれるんだろう?」
どこか挑発的で、それでいて眩しい笑顔。
思わずつられて笑ってしまう。
「もちろんです。」
「それでこそ上総。さて、飯にしよう!腹が減った。」
「はい。」
ずっと共に在りたい。
死が二人の時間を止めるまで。


