「千秋、キスしようか」

 だからあたしがキスする相手も壱兄だけだ。そう言ってくる相手も、壱兄だけ。全員に猫ッかわいがりされている自覚のあるあたしだけど(兄3人ははっきり言って絶対にシスコンだとあたしは信じて疑わない)、壱兄だけは特別だ。

「うん、いいよ」

 あたしはあっさりと瞳を閉じて、壱兄の前に無防備なくちびるを投げ出す。

 壱兄があたしのくちびるに自分の唇を重ねる。丁寧にうわくちびるからしたくちびるをなぞる。あたしが息苦しくなって息継ぎしようと唇を開くと、その隙間から熱い舌をもぐりこませてきて、口内を丁寧になぞる。

 その辺であたしは既に腰砕けになっていて、立っていられない。前は壱兄とキスするときは立ってしていて、あたしの腰が砕ける頃を狙って壱兄がキャッチしてくれてたんだけど、今は最初からあたしがベッドに寝て、その上から壱兄が覆いかぶさってキスをしてくる。そうすることにしている。

 ……でも。

“コンコン”

 ドアを鳴らすノックの音が響き、あたしは慌てて起き上がる。壱兄は慣れた様子で部屋のクローゼットの中に隠れる。おかげであたしの部屋のクローゼットにはいつも、人一人が隠れられる場所がいつも確保されている。