あたしには自慢のお兄ちゃんが3人いる。

 いちばん上がもうすぐ33歳の浩史(こうじ)兄さん。結婚して既に子どももいるけど、奥さんの快(こころ)姉さんは子どもをつれてイギリス支社で新聞記者をしているというぶっ飛んだカンケイ。浩史兄さん、略して浩兄はそれを受け入れて実家で待っている。亡くなった両親が生きていたらどんなに怒っているだろうけど、実は奥さんである快さんのもとに、浩兄が訪れる2、3回ごとにひとり、子どもが増えていることは内緒だ。だから今、浩兄には3人の子どもがいる。

 二番目が康孝(やすたか)兄さん。現在27歳。まだ結婚には至っていない。彼女もとっかえひっかえの康兄の職業は、実は弁護士だったりする。だからこそとっかえひっかえになるんだろうけど。

 そして3番目が、壱哉兄さんだった。現在26歳。あたしよりたったいっこ上なだけの年齢。今年27歳になる。だからあたしは今年26歳になる。フリーターだったはずなのに、いきなり、中学校の数学の先生になっていた。

 どうして3番目の壱哉に“イチ”ってついてて、1番目の浩史は“ジ”ってついてるのか、となんにも知らないひとは本当に不思議がる。その理由を、あたしは知らないことになっている。