その時、隣の女が俺のスプーンの中を覗いて、震えた声を上げた。
『せ、せんせぇぇぇ・・・木崎君のシチューの中にぁぁぁあげはの・・・』
教室中阿鼻叫喚。
俺は吐き戻した。
飲み込んだモン、全部、アゲハの―――のような錯覚に襲われて。
パ二クル室内で、美代だけは淡々と吐しゃ物の後始末しながら言ったもんだ。
とても同情的な顔で
『もうセミが初陣の声を上げる季節だってのによりにもよって青虫だなんて、不運だったわね。』
・・・コイツ、知ってんだ。
つか、なんで知ってんだ。
俺が青虫キライだっての。
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