初、教師陣を憂う



「あいつは他と"違う"からじゃあないか?」

佐倉はソファーにドカッと座る。
まるで家主だ。

「そう言えば、なんであの子だけなんだい?」

そんな態度を諫めることもせず佐倉と向かいのソファーへと身を沈ませる初。

「……花の色を知っているだろう」

「淡緑色の綺麗な花だ。それを言うなら鬱金(うこん)は違うだろう。あの子も黄色の花だ」

「…………そうだな」

「そうだよ」

「………………えっと」

「なんだい?」

「……………………実は、知らないんだ」

「はあ!?なんでそうなる?」

「何百もの桜を育ててきたが、あいつだけなんだよ。何故かは知らん」

そう言ったきりぷいと横を向いてしまった。
子供だ。

「それは、」

「知らん。あいつが"そう"だとも限らん」

言葉を喰うように発せられた台詞に初は口を閉じた。

――それは、あの子があんたの次だってことなのか

一番怖い質問は世界には響かなかった。
神の耳にも入らなかった。