初、教師陣を憂う



「何ため息ついてんだ?初」

おばぁ、お初さんと呼ばれることが多い初にとって呼び捨てにする人は決まっている。

「佐倉。遅いじゃないか」

よいしょ、と窓から侵入してきたのは天神学園の庭師であり要の結界を創る桜の木。
佐倉 花王。

「窓から入らなくてもいいだろう?」

「ちょうど下に江戸彼岸がいたんでな、枝伸ばしてもらった」

指される指が導くままに外をのぞくと、青々と葉をつけている枝に一瞬だけ悪戯っぽく笑う女性が見えた。
桜の一種、江戸彼岸の化身である。

「……甘やかしすぎだよ」

声をかけるとほっとけ、とでも言いたげに葉が揺れる。

「"あいつ"は学校見学中だ。前回から随分期間が開いちまったから」

「"あの子"園の中で仕事をしたがるのは何が原因なのかね」

外の江戸彼岸はあとで叱っておこうと心に決めて初は佐倉に向き直る。