初、教師陣を憂う




「嘘じゃあないんだよ」

初が言うのと同時にどこかで爆発音。
また吐血博士だろうか。
そして爆発音が消えると共に鐘の音が鳴り響く。
昼休みの始まりだ。
騒がしさが一段と増し、我先にと食堂や中庭、屋上といった人気スポットへ走る生徒たち。
中には人外の力を発揮して窓から飛び降りる生徒もいる。

葉を広げて待つ江戸彼岸の下へ木陰を求めて生徒が集まりだした。
その様子を窓から眺めていた御衣黄は一言。

「私の願いは叶えられなかった」

と呟いた。

「ごめんね。この前までは吉野ちゃんが手伝ってくれていたんだけど」

「……吉野は枯れましたね。これであの時いたのは私だけになってしまった」

窓の外から室内へと視線を移す。

「お前にしか頼めない」

御衣黄の美しい頬を佐倉が撫でる。

「なる程。全てはこのために仕組まれていた訳ですか」

「いつかはそうする気だった。お前が枯れればそこまで。その気だった」

「御衣黄ちゃん。あたしだって佐倉だっていきなり全てを託すつもりはないよ。ただ、外の世界を知っておくのも良い」

「そうですね。お二人に頼まれたなら仕方がない」