桜木君は先月、
両親を交通事故で亡くしたらしい。
それで確か桜木君の
お母さんの知り合いに引き取られるんだっけ。


「・・・っていうか
 もう桜木君いなくなってるし。
 じゃあねっ真美!!」

「あ、ちょっと美織っ。」

真美に背中を向け、
私は制服のスカートを掃うと
家に帰った。




 *       *       *




「ただいま~。」

「おかえりなさい。」


珍しくお母さんが
玄関まで私を迎えにきた。
なんだかニコニコしている。


「お母さん機嫌よくない?
 なんかキモイんだけど。」

「キモイとか親に言わないのっ。
 あのね美織、実は
 お母さんから大事な話があるの。」

「急に改まってどうしたの?」

私はカバンを床に置き、
ローファーを脱ぎながら
次の言葉を待った。


「今日から1人、家族が増えるの。」

「・・・はあ?
 も、もしかしてお母さん
 に、妊娠しちゃったの!?」

「違うわよ~。
 そういう意味じゃなくて。」


お母さんの笑顔が
なんだか少し怖く感じて
思わず身構えた。