結局、新名くんがなんで教室にいたのか…なんて考えただけ無駄だと思った。
「新名くん家どこなの?」
あたしは新名くんと2人、自転車置き場まで歩いていた。
「学校からチャリで20分ぐらいの所」
「あたしと同じくらいだ」
「東区?」
「ううん、北区」
「じゃあそんな遠くないね」
ここら辺の町は北区、西区、南区、東区と4つに分かれている。
それでも北区と東区は割かし近いほう。
「送ってこうか?」
「送る気ないくせに」
本当新名くんは分からない。
「デートどこ行こうか?」
新名くんはハンドルを爪でトントン一定のリズムで叩いていた。
「行かないって言ったよね?」
「映画館とか?遊園地とか?あーでも外出るのめんどくさいな……家にくる?」
「もう馬鹿なの?」
「頭は悪い方ではないと思うけど?」
「学年で一位か二位か三位なんでしょ?知ってる」
「ははっ、適当だな」
「はぁ…新名くんって普段もそんな感じなの?」
「普段?」
「家とかでもそんな…何て言うんだろう」
中々説明出来ない。そもそも新名くんって何なんだろう?ひねくれてるの?口が達者なの?
…わかんない。
「普通だよ」
「ふーん」
「信じてないね」
新名くんは小さく笑った。
「だって新名くん嘘ばかり吐くし」
「嘘じゃないよ、冗談だよ」
「同じ」
「同じじゃないよ、嘘は傷つけるけど冗談は笑える」
「………」
「あ、無視?」
「もう黙って帰ろう」
あたしのその一言によって新名くんは一度も喋らなかった。
自分で言っといてどうしたらいいか分からない気持ちになった。