隣にいる清水くんの顔さえ、少し見にくい。

彼は膝の上の子猫を下ろし、立ち上がった。
猫はそのまま走り去っていく。
そして彼は、私の背中を軽く叩いた。
突然の事で、思わずドキリとしてしまった。

「すっかり暗くなっちゃったね。そろそろ戻らないと、危ないよ」

「でも、帰りたくない……」

「ワガママ言わない!大丈夫、上手くいくから」

これじゃあ、どっちが年上なんだか分からない。
自嘲気味に笑う。
辺りが暗いので、彼には分からない筈だ。

公園や道路の街灯が点る。
夜が近付いてきている証拠だ。

「でも、本当に帰らないと。『黄昏は逢う魔が時』って言うでしょ?」

「え、初めて聞いた」

「まぁ、これは受け売りなんだけど……」

苦笑いをする。
そんな彼を私は見上げた。

「……明日もいる?」

「え?うん。君がよければ、オレも来るよ」

「本当?」

「あぁ」

「じゃあ、明日もこの時間に会える?」

「いいよ」

ニッコリと笑う彼に私も微笑み返し、公園を後にした。

なぜ、こんなところに清水くんがいたのかは分からない。
けど、彼と話すことで、不思議と私の肩の荷が降りた気がした。

「大丈夫」

私は自分に言い聞かせ、家路に着いた。