「何にも出来ないかも知れないけど……話くらいなら聞くよ?」

「本当……?」

「ホントホント!自分から話し掛けておいて、このまま帰るってのは外道でしょ?」

ニコッと笑う彼。
八重歯がチラリと見える。
その返答に安堵しながら、私はおずおずと話し始めた。

「実は、今年大学受験なんだ。それなのに、全く成績が伸びなくて……」

「えっ?ってことは高3!?」

「そうだけど……」

「す、すいませんでしたあぁっ!!」

突然、私に向かって頭を下げてきた。
驚いたように、膝の上の子猫が鳴く。

意味が分からない。
ポカンとする私を前に、彼は申し訳なさそうに顔を上げた。

「まさか年上だとは思わなくて……」

「いやいや!そんな畏まらないで!」

「でも……」

「私がやりにくい。だから、その……気楽にして。年上だからって、気を遣わないで」

「う、うん」

若干の戸惑いを見せながらも、彼は頷いた。
そして、膝の上の猫を撫でる。
猫は気持ち良さそうにゴロゴロと鳴いた。

「……オレも勉強は苦手で、全然成績が上がらないんだよね」

「そうなの?」

「うん、クラスで一番下。皆からは、六組のバカって言われてる」