「どうしたの?」
頭の上から降ってくる声。
視界に入る、私と同じ学校指定のローファー。
私はゆっくりと顔を上げた。
男子高校生だ。
少し大きめの黒い目は、不安そうに私を見下ろしている。
肩には先ほど追い掛けられていた子猫がいる。
右側に不自然に飛び出たアホ毛は、猫がじゃれる度に上下している。
「さっきから泣いてるようだけど、大丈夫?」
「え……う、うん」
突然の事に戸惑いながらも、何とか返事をする。
彼は安心したように笑うと、私の隣に腰掛けた。
肩に乗っていた子猫が、彼の膝の上に乗る。
そして、眠たそうに欠伸をした。
「あー……突然ごめん。あんまりにも悲しそうにしてるもんだから、つい……」
「何か心配掛けてごめんなさい……」
「いやいや!オレが勝手に気にしただけだし、君が悪いってワケじゃないから!」
慌てたように言う。
ワイシャツのワンポイントマークの色から、高校二年生と言うことが分かる。
彼の声は、不思議と私の気持ちを和らげてくれた。



