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つくつくぼうしが鳴き始めてきた。
今はアブラゼミよりも多くなってきている。
「もう夏も終わりか……」
八月の終わり、つまり明日には、向こうへ行かなくてはならない。
そこまで友達も多くないので、クラスメートには別れを告げずに行こうと思う。
残るは……清水くん一人。
散々悩んだ挙句、やっぱり別れを言うべきだと思い、いつもの時間に公園を訪れた。
噴水の前の、小さなベンチ。
そこに座り、彼が来るのを待つ。
だいぶ日が短くなってきた。
明日で日本ともお別れだ。
そう思うと何だか寂しい。
「うぅ……」
最近嘆いてばっかだ。
こんな顔では清水くんに迷惑を掛けてしまう。
今日は寂しそうな顔は無しだ。
最後くらい、笑顔でいよう。
「よっ!」
「ひゃあ!!」
突然後ろから肩を叩かれ、思わず跳ね上がってしまった。
勢いよく振り向くと、清水くんがいたずらっぽく笑っていた。
肩には例の子猫。
気に入ったのか、相変わらず清水くんのアホ毛でじゃれている。
「お、脅かさないでよ!」
「ごめんね」
軽く笑うと、彼は私の隣に腰掛けた。
猫も肩を降り、清水くんの膝の上に寝転ぶ。
いつもの光景だ。



