無意識に握った拳に力が入る。
手のひらに爪の跡が残るほど、強く。
指先が白くなるほど、強く。
私の言葉を嘘だと思っているのだとすぐにわかった。
(信じないなら、最初から聞かなきゃいいのに)
そう言い返そうと唇を開いたが、一度口の中でその言葉を繰り返した後、発する前に再び口を結んだ。
(…やめよう)
言葉は凶器だ。特に最近の私のそれは。
何を言っても皮肉や嫌みに聞こえてしまう。
例え私にその気がなくても、口から出る音の抑揚は決していいものではなくて。
声に出す前からどんな音になるのか想像するのは難しくない。
凶器なのだ。言葉というのは。
人の心に消えない傷を作ることだって出来る。
忘れてしまうくらい簡単に。
だからこそ、怖い。


